PACIFIC COAST JAM 

元は1989年に『GUITAR WORKSHOP in HAWAII』としてリリースされたもので
2002年にリマスターと衣装替えを行なって復活リリースされた一枚
ジャケットの方は
1989年当時のポップなものの方がいいと思うのだが
ま、新しい方もそれはそれなりに爽快な印象で悪くはない
ライナーノーツによると、このリマスター版は
単発で再発されたものではなく
「ハワイものの一環として登場した」とのこと
どういう経緯にしろ
角松敏生が4曲に絡んだフュージョンサウンドが
今また良い音で聴かれることは喜ばしいことに変わりはない
その角松作品は

01「LIKI LIKE HWY
 角松はシンセサイザープログラミングのみ
 ギター演奏はD.J.プラット
 この当時の角松バンドの要であった久保幹一郎の名前も見える(マニピュレーター)
 一年後にリリースされる角松のインストアルバム『LEGACY OF YOU』に入っていても違和感ないような曲
 疾走感を持たせた勢いあるナンバーで
 知らなければ角松自身がギターを弾いているかのように錯覚してしまう
02「ORSON'S RESTAURANT
 角松作品
 アコースティックギターのクレジットはカポーノ・ビーマー
 他に古川昌義がアコースティックギターで参加している
 古川昌義と言えば、角松作品では
 今井優子アルバム『DO AWAY』の07「Mistress」でのカットギターソロが印象的
 数原晋のトランペットソロは必要不可欠だと思わされるほどマッチしている
 ハワイイの風がふわっと漂う
 タイトルのレストランはアラ・モアナ・ショッピングセンターの横にあったシーフード系レストランとのこと
 アラ・モアナ――
 シーフード系レストラン――
 なんだかいいなぁ、今すぐハワイイに行きたくなるなぁ
 店内でこのアルバムが流れた時にゃあ・・
08「TURTLE BAY WIND
 角松はやはりシンセプログラミングで参加
 角松らしい流れるようなメロディーと迫力あるプログラミング
 ギターはフレッド・シュルーダー、いい音・いいフレーズ
 小池修がサックスで参加
09「I'M GONNA BE ALONE (LAHAINA MOON)
 他の3曲と同じく角松はシンセプログラミングのみ
 コーラス2番目からボーカルが入るのだが
 このボーカルは元シーウィンドのポーリン・ウィルソン
 なかなか・・・どころか、かなり良い感じだ
 ラストあたりのかなり高い音域での歌声などはすばらしい
 それにしても、この曲の始まり方、大好きである
 とにかくもの凄く洒落ている
 シンバルの二音にブンとベースの一音が重なり曲は始まるが
 すぐに入るキーボードが、曲を一瞬にして別の方向へ導く
 このキーボードのフレーズが瞬く間に曲を形作ったところで主役のギターが交じる
 この全ての楽器の音程と位置関係が絶妙
 うまく重なっていてうまく重なっていない
 別の言い方をすれば
 イントロというよりは間奏がいきなり始まったかのよう
 その「滑り出し感」と「裏切り感」が実に鮮やか
 前半のインスト部分と後半のボーカル部分との対比もこれはこれで良い
 チョコとバニラの二色アイスを食って得した気分に似ている・・・かも

この角松作品4曲は
他の曲群に比べるとやはり異質なほどにメロディアスなのであるが
全体の中で聴くことによってその良さも出てくるわけである

他の作品では

04「KOKO
 こちらもポーリン・ウィルソンがボーカルを取るナンバー
 ケンジ・サノのプロデュースによる一曲だ
 刻々と移り変わるような空模様の日、にわかに降るスコール
 雨宿りしながら聴きたくなるような一曲
07「GIRLS WITH GOLDEN TANS
 アコースティックギターの音色が何とも爽やかなナンバー
 弾いているのはカポーノ・ビーマー
 この曲もケンジ・サノがベースで参加している
 午後のビーチで柔らかな風に吹かれながら聴いてみたい

最後に、オビに書かれているキャッチフレーズを引用しておこう
 
 〜東京から、L.A.から、ハワイに終結!
  カラパナがシー・ウィンドが、一体となって感じるサマー・サウンド〜

alone / Bill Evans 

1968年録音
録音場所はニューヨークのウェブスター・ホール
ビル・エヴァンス初のソロピアノ作品としてよく知られている
タイトルはその名も「アローン」
一人きりの名演である
レコードでの曲数は5曲
A面に4曲、B面はなんと1曲のみ
その1曲は14分28秒にも及ぶ
僕が聴いたCDは「アローン+2」
つまり2曲が追加されているもの
計7曲の至福の時間が流れる

01「HERE'S THAT RAINY DAY
 まるで雨音のような美しいイントロで幕を開ける
 そして、ピアノが壊れてしまうのを恐れるかのような柔らかなタッチでの音
 続くメロディーはどこまでも美しい
 本当に、雨の日にしっとりと聴くには最適
 後半はやや元気良く
 それもまた秀逸
 ジェイムス・ヴァン・ヒューゼンジョニー・バークの作品
02「A TIME FOR LOVE
 ジョニー・マンデル
 ああ、いいタイトルだなぁ
 そのタイトル通りの美しいメロディーが展開される
 前半はしっとりとした恋愛映画に合いそうなトーンだが
 途中から弾むようなタッチに変わって雰囲気はまた変わる
 オーラスは再びドラマチックに
03「MIDNIGHT MOOD
 前2曲比べてややポップな感じの馴染みやすい一曲
 ジョー・ザヴィヌルの作品
 何と言うか、ちょっと引っ掛けながら弾くというか
 微妙に遅らせながら弾くプレイがとてもナイス
04「ON A CLEAR DAY
 バートン・レーン作曲
 ミュージカルナンバー
 アルバム中、最もアップでブライトなナンバーか
 滑らかなピアノに聴き惚れてしまう
05「NEVER LET ME GO
 レイ・エヴァンスジェイ・リヴィングストンによる曲
 とにかく14分もあるナンバー
 これ一曲でしっかり三曲分くらいはあるわけだ
 とにかく、なにか大きなエネルギーを感じる
 時々、ハッとさせられるような音が耳に飛び込んできて
 どう言うか、覚醒させられる感じがする
 脳に響く・・・この音楽

あとの+2は
06「ALL THE THINGS YOU ARE 〜MIDNIGHT MOOD
07「A TIME FOR LOVE(別テイク)
である

プロデュースはヘレン・キーン

 ☆YouTube 「HERE'S THAT RAINY DAY」

You're Gonna Hear From Me / Bill Evans 

01「You're Gonna Hear From Me
 1965年の映画『サンセット物語』主題歌
 曲はアンドレ・プレヴィンによるもの
 跳ねるように、けれど滑るように鍵盤を叩くエヴァンスのタッチがすばらしい
 とても可愛らしい印象でアルバム一曲目にふさわしい
 とりわけ最後の終わり方が実にすばらしい
 客の拍手と一緒に、こっちまで拍手をしてしまう
02「Round Midnight
 セロニアス・モンク作の有名ナンバー
 渋い演奏
03「Waltz For Debby
 エヴァンス代表作
 出だしの一音がメガトン級にすばらしい
 これほど透明感ある音を聴いたのは初めてだ
 そこから10秒ほどでベースの音が一旦入るのだが
 このエディ・ゴメスのベースとエヴァンスのピアノが一音一音ズレることなく見事に合っているのだ
 こういうのをインタープレイと言うのだろう
 ブラボー!
 ここでのワルツフォーデビーはとても早い
 普通のペースが散歩だとしたら
 ここでのそれは競歩!
 でも僕はむしろ、この早いワルツ――はすごく良いなと思う
 エディ・ゴメスのベースソロがやや長い気もするが
 だからか、後半のエヴァンスピアノが非常にクリアに聴こえる
04「Nardis
 マイルス・デイビス
 前のワルツ――の可愛らしい感じから一転
 ハードボイルド感漂う重厚な曲
 中盤以降のエヴァンスピアノの早いプレイ
 マーティ・モレルのドラムとの掛け合いなど聴き所は多い
05「Time Remembered
 エヴァンス作によるエヴァンスらしい美しいナンバー
 どの季節にどの風景を思い出しながら聴いてもピッタリ合うだろう
 右手と左手のそれぞれの音の良さが認識できる
 絶妙なタイミングで音を挟んでいくベースにも注目
06「Who Can I Turn To
 ギャバン(香辛料)のCMにでも使われそうな音楽
 フランス料理を楽しげに作るシーンなどが似合いそう
 エヴァンスのタッチは実に軽やかだ
07「Emily
 エヴァンスがしばしばレパートリーとして取り上げるジョニー・マンデル作の本曲
 たたみかけるように紡いでいくメロディー
 しかし決して急ぎ足にはならない
 ここではどちらかというと明るい印象
 前半のテーマ部分もすばらしい落ち着きだが
 アドリブの元気さも聴き応え十分
08「Our Love Is Here To Stay
 これまたアップテンポ
 ガーシュウィン
09「Someday My Prince Will Come
 邦訳は”いつか王子様が”
 ディズニーなどでもお馴染みである
 ムーディーでメルヘンかと思いきやさにあらず
 やっぱり非常に早い!
 しかしこの超高速ピアノプレイは一聴だ
 前半におとずれるアドリブパート途中では
 完全にメロディーというものから逸脱している感じで
 ただ音の高いから低いヘ低いから高いへ何度も移動しているだけに聴こえるが
 それで不思議に成立しているからスゴイ
 それにしてもエヴァンスという人
 スローで情緒的な演奏にかけては天下一品に違いないが
 こういう早い演奏になっても、恐ろしいほどに美しい
 
このアルバムの邦題は「ワルツ・フォー・デビイ・ライヴ!」というものだが
本来は「YOURE' GONNA HEAR FROM ME」である
録音は1969年11月24日
場所は、デンマークはコペンハーゲンにあるジャズクラブ「カフェ・モンマルトル」
別にどうでもいいけど、この1969年11月というのは
僕が生まれた正にその年その月である
自分がオギャーと生まれたその当時の音楽を
今になって聴いていることにとても不思議な思いがする

プロデュースはエヴァンス作品を数多く手がけたヘレン・キーン
日本版は1988年、ビクター音産よりリリースされている

☆トリオの演奏だけど
 YouTubeの映像 Time Remembered

AUTUMN LEAVES / Bill Evans 

1996年9月25日クラウンレコードよりリリース
タイトルはその名もずばり「AUTUMN LEAVES」
邦題は「枯葉」で有名
このアルバムでは7曲目にラインナップされている

ライナーノーツによると、本作品は
20年前にテイチクから出された
『ピアノ・パースペクティブ』と『オータム・リーブス』
という2枚の作品を1枚にまとめたものとのこと
両アルバムに同じテイクが入っていたため
それらまとめて10曲になったということだ

しかしここでややこしいのは
この作品、元の元は
『Waltz For Debby-The Complete 1969 Pescara Festival』
というアルバムなのだ
「枯葉」どころか、もうひとつのエヴァンス代表作品「ワルツ・フォー・デビー」が冠されているのである
しかし、この時のワルツ――は演奏途中からの収録で不完全のものらしく
(参考文献:『新・エヴァンスを聴け!』中山康樹/ゴマブックス・2008年)
だから、これをいっそ端折って
人気曲である「枯葉」をタイトルに持ってきたというところだろう
ま、ジャケ写真もお洒落な写真でうまく合っていて
僕はこういうリメイクも嫌いじゃないけど・・・

録音は1969年、ヨーロッパツアー
7月のイタリア・ペスカラでのライブ音源である
ラジオ放送が音源という代物で
いわゆるブートレグ版というやつである
なので、音は正直言って悪い
現在形の耳障りの良い音質に慣れている者には
このくぐもった感のある音は結構な不満が残ることと思う
けれど、僕なんかは「音の悪いカセットテープ」を随分と聴いてきたから
それに比べると何段階かは良いと思えることも確か
レコード針がブチブチ言っている、こもった音のテープほど悲惨なものはない
それに、なにせここで聴かれる音楽そのものは間違いなくすばらしいもの
観客の拍手と一体となってライブの空気が伝わる

01「Emily
 ジョニー・マッサージョニー・マンデルによる共作
 出だしからのソロ演奏部分が実に情緒的
 いいなぁ、素敵なだぁ
 ベースとドラムが入ってからはまた雰囲気が変わって進行する
 ドラムのシンバル音が結構大きくてビックリするが
 ま、そういうのも「あり」なのでしょうな
03「Alfie
 バート・バカラックハル・デビッド共作によるよく知られた名曲
 ディオンヌ・ワーウィック、バネッサ・ウィリアムス、日本では吉田美奈子
 ボーカルものも随分いろいろ存在するけれど
 このエヴァンス版アルフィー、そうか、そうなるのか!
 いやぁ、ええですなぁ
 1969年、イタリア・ペスカラ
 知らない時代の知らない場所のその日の観客の顔が目に浮かんでくるようだ
05「Very Early
 始まり方が何ともいえず良い
 一瞬にして引き込まれてしまう
 これはエヴァンス作による一曲で
 アルバム『MOONBEAMS』(1962録音)の最後に入っている
07「Autumn Leaves
 ご存知「枯葉」
 出だしから早い早い
 一気に弾いてベースソロ
 後半も、尻に火がついたかのように早い
 なんか・・・ただ単に早く終りたかったんか? って言いたくなるゾ

他にも09「Come Rain Or Come Shine(降っても晴れても)」や
マイルス・デイヴィス作の
10「Nardis(ナルディス)」など
有名な曲が次から次へとめじろ押しだ

トリオの構成はエヴァンスの他
 エディ・ゴメス(B)
 マーティ・モレル(Ds)
である

☆よーし、じゃあ見てみるかい?
 大好きな一曲なのだぁ
 YouTubeの映像 Bill Evans Trio  Emily
 

Panorama / 押尾コータロー 

ま、フュージョン・ジャズカテゴリーということで

2005年9月7日リリースの4thアルバム
かの有名曲05「コンドルは飛んでいく」以外
すべて押尾コータロー自身の作によるものだ
旅をして出会った人々や景色、想い出を1本のギターで残したい――
という思いから作られた作品で
世界のどこかの風景が目の前に現れるような構成となっている
本当にギター1本でここまでの音楽を成立させてしまうとは
スゴイスゴイ!

01「Departure
 タイトルの通り、旅に出る初めのワクワク感を表現した曲
 はねるように元気良いギタープレイが実に爽快だ
02「オアシス
 ハウス食品「六甲のおいしい水」CM曲
 なんてマッチしてるんでしょう
 大きな蒼い空が目の前に広がるような風景を思い起こしてしまう
 サビの部分がナイスメロディー
04「オーロラ
 こちらもタイアップでGUNZE「フラッティ」CM曲
 オーロラを実際見たことはないけれど
 見たならばきっと「心ここにあらず」という境地に陥ってしまうだろうな
 そんなようなちょっと浮き足立った感じをうまく表現していて
 実際にオーロラを見ながら聴いてみたいと思わせる
 アラスカを愛した(愛された)写真家の故・星野道夫なら
 この曲をどのように聴いたのだろうか
10「家路
 ライナーノーツにもあるが
 家路についた時の「寂しさ」と「安堵」をまさに現した曲
 僕も学生時分はよく旅に出ていて分かるのだ
 この同時に訪れる相反する気持ちが
 始まりからセンチメンタルなメロディー
 けれどどこかポジティブな気配もあって秀逸
 アルバム中最も好きな曲かもしれない
11「Carnival
 前曲10のスローから一転
 アップテンポの軽快で明るいナンバー
 ジョイントしているのは山崎まさよし
 山崎はパーカッションとブルースハープを演奏している
 このリズム感が抜群にゴキゲンだ
 押尾が奏でるメロディーも文句なし
 夏の涼やかな風を受けながら
 冷えたカクテルグラスを手に聴きたいものだ